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怪奇幽玄亭

チャンネル登録者数 867人

225 回視聴 ・ 15いいね ・ 2025/02/25

【怪談】「火遊び」

【怪談】「火遊び」

語り手:立川志獅丸 @tatekawa440
監修:ナツノカモ @natsunokamo

『火遊び』

第一場 町外れの火遊び

喜助「(火打ち石を叩く)すごいな、松吉! 見ろよ、火花が飛んだ!」
松吉「本当だ!喜助!火打ち石ってすげぇな。面白いな。ほら、もっと飛ばしてみよう!」
喜助「おい、それ大丈夫か?」
松吉「平気だよ。ちょっと遊ぶだけさ。」
喜助「あっ……! 松吉、それ……!!」
松吉「嘘だろ!? どうしよう……!このお家に火がついちゃった!」
喜助「に、逃げよう!」

第二場 江戸の大火

町人A「火事だ! 火事だぞ!」
町人B「水を持ってこい! 早くしねえと、町が丸ごと焼けちまう!」

佐平「松吉!どこだ!? いた!しっかりしろ! 大丈夫か!」
松吉「とうちゃん……俺、やっちまった……。」
佐平「松吉……ここで死んだことにするんだ。」
松吉「え?」
佐平「お前はもういないことにするんだ……。」

第三場 目撃者の始末

町人A「ひでぇな……こんなに燃えちまって……。」
町人B「佐平の家も丸焼けだ……ああ、息子の松吉も……。あ、佐平」
佐平「息子は死んだ……私の手で、供養してやる。」
喜助「違う! 松吉は生きてるんだ! 俺、見たんだ!」
佐平「……何を言っている?」
喜助「火の中から、松吉を助け出してたろ? みんなには黙ってるけど、俺は見ちまったんだ!」
佐平「……そうか。お前だけが見たのか?」
喜助「う、うん。でも大丈夫! 誰にも言わない! だから……。」
佐平「すまないな、喜助。」
喜助「え……?」

次の瞬間、小刀が喜助の喉元を裂く。喜助は倒れ、血が地面に広がる。

第四場 真相の発覚

町人C「あの火事から何年経ったかな。毎年、この日になると、供養をしないといけないんだな……。」
町人B「仕方ねえよ……あの時の火事で、どれだけの人が死んだか……。」
老僧「……しかし、不思議なことがあるんじゃ。」
町人A「爺さん、何です?」
老僧「夜になると、この焼け跡のそばで、『ごめんなさい』と泣く声が聞こえるそうじゃ……。」
町人C「え?……なんだ?火打ち石の音が聞こえる」
松吉の亡霊「ごめんなさい……ごめんなさい……。」
町人B「ま、松吉の幽霊だ……!!」
佐平「……まさか……」
松吉の亡霊「とうちゃん……喜助を……返してよ……。」
佐平「違う……違うんだ……!」

松吉の亡霊の足元から、もう一つの影が現れます。

喜助の亡霊「佐平さん……俺のこと、忘れた?」
佐平「すまない! すまないぃぃぃ!!」

松吉と喜助の亡霊がゆっくりと佐平を包み込み、夜が明けると、佐平の姿はそこになく、焼け跡に彼の草履だけが残されていました。

第五場 鎮魂の夜

老僧「……松吉と喜助はここに埋めた。これで、二人とも安らかに眠れるじゃろう。」
町人A「だが、佐平は……?」

その時、風が吹き、遠くで「カチ……カチ……」と火打ち石の音がします。

町人B「……まだ、終わっちゃいねえのかもな……。」

(終)

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